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  • 執筆者の写真奥平智之

免疫に大切な抗酸化ミネラル:「セレン」の6つの役割 

更新日:2021年3月2日


【免疫に大切な抗酸化ミネラル:「セレン」の6つの役割】 

セレン(Se)は、「グルタチオンペルオキシダーゼ」や「セレノプロテインP」などの様々な『抗酸化酵素』の補因子となる必須ミネラルであり、『抗酸化ミネラル』と言えます。そのため、セレン欠乏は、酸化ストレス(活性酸素)を引き起こします。

セレン欠乏は、腸の機能が著しく低下している患者、完全非経口栄養を受けている患者、90歳以上の高齢者は特に注意する必要があります。

《セレンと免疫》セレンは、免疫力に欠かせません。サイトカインを抑制する役割もあります。下記にいくつか報告をあげます。

1. セレン欠乏は、酸化ストレスの環境となり、ウイルスゲノムを変化させる可能性があり、通常は良性または軽度の病原性ウイルスが、毒性が非常に強くなる Guillin OM, et al. selenoproteins and viral infection. Nutrients. 2019;11:2101

2. セレン欠乏はインフルエンザウイルス感染の病理を増加させるだけでなく、コクサッキーウイルスのゲノムの変化を引き起こし、無毒のウイルスが遺伝的変異による病原性を獲得することを可能にする可能性 Beck MA, et al. Rapid genomic evolution of a non‐virulent coxsackievirus B3 in selenium‐deficient mice results in selection of identical virulent isolates. Nat Med. 1995;1:433‐436.

3. セレンは、ビタミンEと協調して、フリーラジカルの形成を防ぎ、細胞や組織への酸化的損傷を防ぐ働きをする酵素群を助ける Harthill M. Review: micronutrient selenium deficiency influences evolution of some viral infectious diseases. Biol Trace Elem Res. 2011;143:1325‐1336.

4. セレンと朝鮮人参のサポニンとの相乗効果により、気管支炎コロナウイルスワクチンに対する免疫応答が誘導される Ma X, Bi S, et al. Combined adjuvant effect of ginseng stem‐leaf saponins and selenium on immune responses to a live bivalent vaccine of Newcastle disease virus and infectious bronchitis virus in chickens. Poult Sci. 2019;98:3548‐3556.

《甲状腺ホルモン活性化》

セレンは、甲状腺ホルモンの非活性型(T4)を活性型(T3)に変換する酵素の補因子です。

《水銀などの重金属の解毒》

マグロには水銀がたくさん含まれていますが、セレンも豊富なので、水銀の毒性を打ち消してくれています。


《抗炎症》

核因子カッパ-B(NF-カッパB)シグナル伝達経路は、炎症反応の増強と関連しており、その活性化はインターロイキン-6およびTNF-α産生と有意に相関しています。セレンは、セレノプロテイン遺伝子の発現を調節することにより、NF-κBの活性化を阻害する可能性があります。

Duntas, L. Selenium and inflammation: underlying anti-inflammatory mechanisms. Hormone and Metabolic Research, 2009; 41(06): 443-447.

《そのほか》

セレンの欠乏は、癌、心血管疾患、2型糖尿病、肺障害など、さまざまな臨床的影響をもたらす可能性があります。

Kumar, B. S., et al. Selenium nutrition: how important is it?. Biomedicine & Preventive Nutrition, 2014; 4(2): 333-341.

《摂取の目安》

セレンをサプリメントで摂りすぎてもいけません。他のミネラルとの相互作用があるため、亜鉛が欠乏することがあります。

Kachuee, R.; et al. The effect of dietary organic and inorganic selenium supplementation on serum Se, Cu, Fe and Zn status during the late pregnancy in Merghoz goats and their kids. Small Ruminant Research. 2013; 110 (1): 20–27.

1日当たりの摂取量目安は、大人で、男性30~35μg/日、女性25μg/日とされています。セレンの過剰摂取による悪影響を防ぐために、米国医学研究所は、成人の許容上限摂取量を400 µg / dに設定しています(Office of Dietary Supplements 2009)。しかし、260µg /日でも過剰になることがあります(Vinceti, M., et al. Health risk assessment of environmental selenium: Emerging evidence and challenges. Molecular medicine reports, 2017; 15(5): 3323-3335.)。過剰症の症状は、吐き気、食欲不振、頭痛、息のニンニク臭、脱毛、爪の変形、倦怠感、神経過敏などです。

サプリメントであれば、1カプセルあたりマルチビタミンに55~70µg、セレン単独サプリであれば100~200µgはいっています。セレンは、魚介類、肉類、卵黄に豊富に含まれていますので、なるべく食事でしっかり摂取しましょう。食事での過剰症はありません。


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