この体質は、親から受け継いだもの、「遺伝だから」とあきらめてしまったことはないですか?
しかし、様々な工夫や努力、環境などの後天的な要因が、『親から引き継いだ遺伝子とは関係なく』、良い方向に体質を改善してくれるかもしれません。
これが「エピジェネティクス」です。
受精卵が分化して、手や肺などの細胞が形づくられていて、どんな細胞をつくるかは遺伝子によって決まります。
どの細胞もベースは同じ遺伝情報(DNA配列)を持っているのに、それぞれ別々の細胞になるのは、それぞれの細胞で「使う遺伝子」と「使わない遺伝子」が決まっているからです。
そして、それぞれの細胞にある「使う遺伝子」と「使わない遺伝子」を決めているのが「エピジェネティクス制御」です。
A(アデニン)T(チミン)C(シトシン)G(グアニン)といった塩基配列のある部分がメチル化する(=メチル基(CH3)に置き換わる)と、遺伝子の働きがストップします。
このDNAの4種類の塩基の並び方だけが遺伝子の働きを決めるのではなく、エピジェネティクスによってどんな遺伝子が働くかが決まるということです。
エピジェネティクスは、主に下記の2つでコントロールされています。
●2種類のエピジェネティクス制御:遺伝子発現に影響を与えるものは?
① DNAメチル化・・・・DNAメチル化あるいは脱メチル化により、塩基配列情報自体には変化なく遺伝子発現のオン/オフが切り替わります。DNAのメチル化は、不要な遺伝子を働かせないようにして、それぞれの細胞をつくり出し、我々のからだを正常に保つ働きをしています。
DNAメチル化は、主にCpGジヌクレオチドとの関連でシトシン残基にのみみられます(Suzuki and Bird、2008)。遺伝子のプロモーター領域では、いわゆるCpGアイランドにあるシトシンのメチル化が、主にヒストン修飾複合体の動員を通じて遺伝子発現をオンまたはオフにするタンパク質によって感知されます(Miranda and Jones、2007)。
② ヒストン修飾・・・・メチル化・アセチル化・リン酸化などの化学的な修飾によって染色体DNAが包まれているヒストンタンパク質に物理化学的な変化がおき、遺伝子発現に影響します(Kouzarides、2007年)。
●エピジェネティクスとは?
例えていうと、ゲノムを先ほどご説明したA・T・C・Gの4種類の音符が並んだ音の羅列だとするとしましょう。音に強弱をつけたりテンポを変えたりして曲を奏でるしくみが、エピジェネティクスと言えます。
カラダをつくる細胞には、原則としてすべて同じゲノムが入っているのに、目や心臓などいろいろな種類の細胞になれています。これは、同じ音の羅列(DNA の塩基配列)をつかって、ちがう曲(肌の細胞や髪の細胞など)を奏でるしくみ、つまりエピジェネティクスのおかげなのです。
つまり、DNA塩基配列の変化(突然変異)とは異なり、エピジェネティクスとは、「DNA塩基配列の変化を伴わない」細胞分裂後も継承される遺伝子発現のことです。
Bergerらは、 2009年に、エピジェネティックな形質は、「DNA配列を変更せずに」染色体を変更した結果として生じる安定した遺伝性の表現型と、定義しています。
●遺伝子サイレンシング・・・・転写レベルあるいは翻訳レベルで遺伝子発現を抑制・中断すること。つまり、遺伝子のスイッチを切って、「使わない遺伝子」にするということです。この仕組みが、がんやウイルス感染などの病気に関連する怖い遺伝子が発現しないようにして、私たちのからだを守ってくれています。
★遺伝情報とは対照的に、エピゲノムは動的!!!★
DNAの塩基配列をゲノムとよぶことに対して、そのゲノムに加えられた修飾をエピゲノムとよびます。エピゲノムは後天的なものであり変化を受けます。
栄養因子、環境毒素、社会的接触、薬物乱用など、様々な後天的な経験に依存するさまざまな要因に応じて変化する可能性があります。
環境と遺伝子調節システムは相互に作用しています。
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