マラリア感染率の高い地域で、鉄欠乏の有無に関わらず全ての子供に鉄と葉酸を補給することは有害であるかもしれないという報告があります。
ザンジバルに住んでいる1〜35か月の子供たちを対象に、ランダム化プラセボ対照試験を行いました。子供たちに毎日の経口の鉄補給を割り当てたところ、全死因死亡率が15%増加しました。深刻な病気と死亡のリスクが高まったという結果から、鉄欠乏がない子どもへの鉄の補給は控えるべきです。
Sazawal, S.,et al. Effects of routine prophylactic supplementation with iron and folic acid on admission to hospital and mortality in preschool children in a high malaria transmission setting: community-based, randomised, placebo-controlled trial. The Lancet, 2006; 367(9505), 133-143.
生後2か月の乳児を対象とした筋肉内への鉄投与による予防のプラセボ対照試験が、マラリア感染率の高いパプアニューギニアで実施されました。結果は、鉄の補給により乳児の寄生虫血症と脾腫の有病率が増加しました。出生ヘモグロビンが低かった乳児では、追跡時にマラリア発生率が低いことがわかりました。マラリアに対する鉄欠乏の保護的役割を示しており、マラリアが流行している地域での鉄の不用意な投与は避けるべきです。
Oppenheimer, S. J.,et al. Iron supplementation increases prevalence and effects of malaria: report on clinical studies in Papua New Guinea. Transactions of the Royal Society of Tropical Medicine and Hygiene, 1986; 80(4): 603-612.
マラリアや結核の疾患の有病率が高く、標準的な治療が利用できない地域においては、適度な鉄欠乏はむしろ有益かもしれません。
ベースに何らかの炎症がある場合、鉄の補給はむしろマイナスになります。
鉄は多すぎれば感染に弱くなりますし、鉄が少なすぎれば免疫力が低下してしまいます。
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