〇AGEs(えーじーいーえす)って聞いたことありますか?
タンパク質に「糖」がベタベタくっついてしまうイメージ。
パンケーキが熱でこんがり焼けた茶色のコゲに例えられます。
カルボニルストレス(有害なカルボニル化合物が体にたまってしまうこと)が強くなると、AGEs(終末糖化産物)がたまってしまいます。
〇AGEsはAGEs受容体にくっついて、細胞内の『炎症』を増やします。
糖尿病や心血管障害の病態に深く関係していますが、これらが原因による死亡率は、統合失調症では、健常者と比べて3倍も高く(Olfson;2015)、平均寿命は、なんと、20年以上も短いのです(Tiihonen;2009)。
〇ビタミンB6は、3種類(ピリドキサミン、ピリドキシン、ピリドキサール)あります。
この中で、ピリドキサミンのみが、カルボニル化合物を捕らえてAGEsの産生を抑えて、カルボニルストレス抑制作用があります。
〇カルボニルストレスの血清マーカーは「ペントシジン」。
ペントシジンが高値の統合失調症の患者さんにピリドキサミンを1200~2400㎎/日で投与。かなり多いですね・・・
①10名中2人の患者さんにおいて精神症状の改善、疎通性や感情表出が明らかに改善しました。
また、4名の患者さんで錐体外路症状(手がふるえるなど・・)の副作用が軽減しました。
⇒《理由》ピリドキサミンから変換されたピリドキサールによって、セロトニン、ドパミン、GABAなどの脳内神経伝達物質が調整されたことが、精神症状の改善や副作用軽減につながったかもしれません。
※マウスの動物実験では、ピリドキシンを与えると、海馬でのBDNF(脳由来神経栄養因子)が有意に上昇するという報告があります(Yoo;2011)。
②ピリドキサミンの投与量が多かったためか、2名にビタミンB1欠乏が生じました。
⇒《理由》大量のピリドキサミンがピリドキサールに変換され、アミノ基をもつチアミンを捕らえて、枯渇させたかもれません。
③ 4名に眠気がみられました。
⇒《理由》GABA濃度の上昇が原因かもしれない。
★有用だったのは、統合失調症の一部の患者さんだけでしたが、副作用が比較的少ないことを考えれば、ビタミンB6も考慮しても良いかもしれない。
宮下光弘ら:カルボニルストレスが亢進する統合失調症患者に対するピリドキサミンの治療可能性.精神神経学雑誌,120(10);861-867.2018
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