コーヒーは、炭水化物、脂質、窒素化合物、ビタミン、ミネラル、アルカロイド、およびカフェイン、カフェストール、カーウェオールなどのフェノール化合物を含む、1,000を超えるさまざまな化学物質で構成される化合物の複雑な混合物です。
(Spiller MA. Caffeine. Boca Raton: CRC Press; 1998. The chemical components of coffee; pp. 97–161. )
コーヒー豆中にはカフェストールが多く含まれているため、コーヒー豆そのものや焙煎し挽いたものを摂取すると、血清中の総コレステロールとLDLコレステロールが上昇します。(Urgert R, et al.The cholesterol-raising factor from coffee beans. Annu Rev Nutr. 1997;17:305-324.)
カフェストールの濃度はエスプレッソコーヒーで比較的高いですが、一回に飲む量が少ないので、カフェストールの量としては中程度です(4mg/杯)。
スカンジナビアンコーヒーやトルココーヒー、フレンチプレスコーヒーは相対的に高いレベルのカフェストールを含んでいます(6-12mg/杯)。
一方、フィルターコーヒー、ダンク式コーヒー、インスタントコーヒーでは0.2-0.6mg/杯と含有量は低いです。(Gross G, Jaccaud E, et al.Analysis of the content of the diterpenes cafestol and kahweol in coffee brews. Food Chem Toxicol. 1997;35(6):547-554. )
多少のカフェストールは挽いたコーヒー豆からコーヒーを淹れる際に抽出されますが、大部分はフィルター紙によって除去されます。
一方で、カフェストールは、膵臓のβ細胞に対してインスリン分泌促進効果を示し、ヒト骨格筋細胞へのグルコース取り込みを刺激し、マウスの高血糖を軽減すると報告されています。
(F. B. Mellbye,et al. “Cafestol, a bioactive substance in coffee, has antidiabetic properties in KKAy mice,” Journal of Natural Products, vol. 80, no. 8, pp. 2353–2359, 2017.)
胆汁酸は、ファルネソイドX受容体(FXR)の生理学的リガンド(刺激剤)です。
カフェストールは、核内ホルモン受容体であるファルネソイドX受容体(FXR)とプレグナンX受容体(PXR)の両方のリガンド(刺激剤)です。
(Ricketts, M. L., et al(2007). The cholesterol-raising factor from coffee beans, cafestol, as an agonist ligand for the farnesoid and pregnane X receptors. Molecular endocrinology, 21(7), 1603-1616.)
カフェストールは、2つの受容体を介して、回腸のFGF15(線維芽細胞増殖因子:Fibroblast growth factor)を誘導します。 FGF15は、肝臓に対して胆汁酸合成を抑えるようにネガティブフィードバックをかけます。
カフェストールは、CYP7A1のダウンレギュレーションによって胆汁酸合成を抑制します。(Post SM, et al.2000 Cafestol increases serum cholesterol levels in apolipoprotein E*3-Leiden transgenic mice by suppression of bile acid synthesis. Arterioscler Thromb Vasc Biol 20:1551–1556)
そして脂質の合成を増やします。
①コーヒー豆のコレステロール上昇因子であるカフェストールは、核内受容体FXRおよびPXRを活性化することにより、コレステロール代謝に関与する遺伝子の発現を直接調節できます。
②ファルネソイド受容体(FXR)は、回腸での胆汁酸の吸収に重要な受容体です。腸細胞のFGF-19(線維芽細胞成長因子19 )を刺激し、CYP7A1を阻害し、負のフィードバックによって新しい胆汁酸の合成を減少させます。つまり、胆汁酸を調整するしくみをつくっているということです。これが、FXRの大切な役割。「胆汁酸の腸肝循環の調節因子」でもあります。
また、FXRは肝臓で、 PPAR-αの活性化によって遊離脂肪酸(FA)のβ酸化を刺激します。つまり、脂肪を燃やして、エネルギー(ATP)を作り出します。
③カフェストールは、肝臓の解毒酵素グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の発現を誘導します。これは、カフェストールは、抗発がん性に関与しているかもしれません。カフェストールは、ラットで抗発がん性を示したという報告があります。Masten, S., et al.(1999). Review of toxicological literature. North Carolina: Research Triangle Park.
●まとめ
コーヒーの「カフェストール」には、ファルネソイドX受容体(胆汁酸受容体)を刺激し、
胆汁酸を回収を促進して合成を抑制し、コレステロール上昇作用させる作用があります。また、プレグナンX受容体(解毒受容体)を刺激して、解毒酵素を亢進させます。異物やビタミンDの代謝を行います。
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奥平智之
日本栄養精神医学研究会 会長
医療法人 山口病院 副院長
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