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  • 執筆者の写真奥平智之

「胆汁酸」受容体の5つの役割とは?:代謝を調節するファルネソイドX受容体とは??胆汁酸の役割は、脂質やビタミンDの吸収だけではない

更新日:2023年5月10日



胆汁酸の基本的な働きは、リパーゼを活性化させ、食事中の脂質とミセルを形成し、その吸収をしやすくすることです。そして、胆汁酸は、ビタミンA/D/E/Kなどの脂溶性ビタミンの吸収にも大切。


胆汁酸は「コレステロール」から合成されますが、コレステロールから胆汁酸への変換によってコレステロール代謝を調節し、コレステロールの排泄の役割もあります。


回腸まで到達した胆汁酸は、ほとんどが再吸収され、腸肝循環を繰りかえしますが、一部の胆汁酸は大腸に到達し、腸内細菌の作用によって変換されます。


脱抱合や脱水酸化反応により、タウリンやグリシンに抱合されたコール酸、ケノデオキシコール酸などの一次胆汁酸は、最終的に、デオキシコール酸やリトコール酸といった毒性のある二次胆汁酸に変換されます。


これは、昔から言われているお話。

近年では、胆汁酸は、それ以外にも、様々な働きをしていることがわかっています。


キーワードは、ファルネソイドX受容体(FXR)


胆汁酸を吸収する回腸の細胞の中にある核内受容体(細胞の核の中の受容体)です。

つまり、これは、胆汁酸がくっついて作用するための鍵穴です。



一次胆汁酸の約95%が回腸で再吸収されるので、ほとんどの胆汁酸は、この受容体にくっついて作用することになります。その先の結腸に行くのは、ごくわずか(〜5%)。



【胆汁酸受容体(FXR)の5つの作用】

①FXRは、肝臓にもあり、CYP7A1を阻害することにより胆汁酸合成を抑制し、SREBP-1cを阻害することにより中性脂肪(TG)の合成を抑制します。


②FXRは肝臓で、 PPAR-αの活性化によって遊離脂肪酸(FA)のβ酸化を刺激し、③グリコーゲン合成を増加させ、グルコースからの解糖を抑制します。


④腸のFXRはFGF-19を誘導し、GLP-1の活性化によってインスリン感受性を高めます。


以上のことから、糖尿病の高血糖や高脂血症の改善にも寄与する可能性があります。


⑤FXRは、腸細胞のFGF-19(線維芽細胞成長因子19 )を刺激し、CYP7A1を阻害し、負のフィードバックによって新しい胆汁酸の合成を減少させます。つまり、胆汁酸が多くなりすぎたら、きちんと減らすしくみをつくっているということです。これが、FXRの大切な役割。「胆汁酸の腸肝循環の調節因子」でもあります。



(参考:略語の説明)

CA、コール酸; CDCA、ケノデオキシコール酸; CYP7A1、シトクロムP450 7A1; FXR、ファルネソイドX受容体; FGF-19、線維芽細胞成長因子19; SHR、短いヘテロダイマーパートナー。SHP、短いヘテロダイマーパートナー。TG、トリグリセリド; FFA、遊離脂肪酸; PPAR-α、ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体-α; GLP-1、グルカゴン様ペプチド-1; ACC、アセチル-CoAカルボキシラーゼ; FAS、脂肪酸シンターゼ; SREBP-1、ステロール応答性エレメント結合タンパク質-1; SCD1、ステロイル補酵素Aデサチュラーゼ1; DCA、デオキシコール酸; UCDA、ウルソデオキシコール酸。



(参考)ファルネソイドX受容体アゴニスト(刺激薬)

試験中の選択的FXRアゴニスト。動物モデルでは、インスリン感受性、ブドウ糖および脂質代謝を改善し、肝臓、腎臓、および腸の組織で抗炎症および抗線維化効果を示しました

Abenavoli L, et al.Obeticholic acid: a new era in the treatment of nonalcoholic fatty liver disease. Pharmaceuticals (Basel) 2018;11 pii: E104.


(参考)大豆タンパク質

大豆タンパク質の摂取により、胆汁酸の排泄が増加することで血清コレステロール濃度が低下することが基礎研究で示されています。

(コレステロールを加えると、腸におけるコレステロールの過負荷を抑えるために、コレステロールを吸収するために、胆汁酸が排泄も増加します。)

Soya protein stimulates bile acid excretion by the liver and intestine through direct and indirect pathways influenced by the presence of dietary cholesterol. British journal of nutrition, 111(12), 2059-2066.2014


(参考)腸内細菌と胆汁酸

腸内細菌は、胆汁酸の吸着作用、遊離型胆汁酸の菌体内への吸収作用などを介して、体外への胆汁酸の排泄に寄与しているとの報告もあります。



~まとめ~


胆汁酸は、単に脂質やビタミンDの吸収だけでなく、ファルネソイドX受容体を通して、私たちの腸肝循環の調整、脂質や糖の代謝も調節してくれています。まさに、ホルモンのような生理活性物質と言えます。












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奥平智之

日本栄養精神医学研究会 会長

医療法人 山口病院 副院長

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■ 書籍:食べてうつぬけ 鉄欠乏女子 テケジョ 血液栄養解析 うつぬけ食事術

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