統合失調症の治療の一助として~アミノ酸「ベタイン」への期待~
- 奥平智之
- 2021年4月16日
- 読了時間: 3分
更新日:2021年5月13日
「ベタイン」って聞いたことありますか?

●ベタイン( Betaine )とは?
アミノ酸の一種です。
ベタインの呼称は、甜菜(てんさい=ビート:Beta Vulgaris)に由来しています。
植物や水産物などに含まれるものです。植物では甜菜などのヒユ科の植物やイネ科の植物、キノコ。
そして、エビ、カニ、タコ、イカ、貝類などの水産物など‥ 甘味や旨味に関わる成分です。
主に、シーフード、特に海洋無脊椎動物(約1%)、小麦胚芽またはふすま(約1%)、ほうれん草(約0.7%)などに、含まれていますが、含有量は、ごくわずかです。
(参考)食物ベタイン含有量(mg /100 g)
ふすま 1339 小麦胚芽 1241 ほうれん草 600-645 ビーツ 114-297 エビ 219
Zeisel, S. H., et al(2003). Concentrations of choline-containing compounds and betaine in common foods. The Journal of nutrition, 133(5), 1302-1307.
★調理法では、沸騰させるとベタインは、大幅に減ります
de Zwart FJ, et al. Glycine betaine and glycine betaine analogues in common foods. Food Chem 2003;83:197–204.
また、ベタインは、甘味や旨味に関わる成分で、調味料としても使われています。
甘味がありますが、糖と反応しメイラード反応を起こさないため、褐色になりません。
●ベタインの生理学的な役割➡①浸透圧調節物質 ②メチル供与体(メチル化)
①浸透圧調節物質として、ベタインは細胞、タンパク質、および酵素を環境ストレス(例えば、脱水、高塩分、または極端な温度)から保護します。
ストレス下の細胞を保護するための有機浸透圧調節物質と言えます。
環境ストレスにさらされると、ミトコンドリアでベタイン合成が引き起こされ、細胞内に蓄積されます。
②メチル基の供与体として、ベタインはメチオニン回路に必要です。
足りないと、
血漿ホモシステイン濃度の上昇
そして、低メチル化を引き起こします
動脈硬化、脂肪肝(脂肪蓄積)、脂質異常症、認知機能の低下につながります。
ホモシステインが上昇すると、①ホモシステインが酸化するとこで発生する過酸化水素により、血管内皮細胞がNO(一酸化窒素)を作れなくなることから、血管の拡張が妨げられてしまいます。
また、②血栓を抑制する作用をもつ物質の働きを妨げ、血栓ができやすくなります。
ベタインは、内臓を保護し、血管の危険因子を改善し、パフォーマンスを向上させます。
ベタインは、慢性疾患の予防にとって重要な栄養素です。
構造としては、アミノ酸であるグリシンのアミノ基に三つのメチル基が付加した化合物になります。
ベタイン=トリメチルグリシン(TMG)は、既にクスリとして承認されています。 ホモシスチン尿症という遺伝性疾患の治療薬として使われています。
ベタインは、からだの中では主にコリンの代謝産物です。
ホモシステインからメチオニンへの変換に関わることから、ホモシステインが原因で引き起こされる動脈硬化によい影響を及ぼす可能性があります。
図:今回、統合失調症患者の血液中の代謝産物を網羅的に測定した結果、一部の患者で、健常者と比べて「ベタインの濃度が低下している」という研究成果が報告されました。
ベタインがこのマウスの統合失調症様の症状を改善するとともに、KIF3の輸送タンパク質であるCRMP2の有害なカルボニル化修飾を軽減することにより、CRMP2の輸送障害における神経細胞の形態異常を改善することで、症状を緩和させていることを明らかにしました。
現在、東京大学の精神科で臨床試験が実施されています。
Betaine ameliorates schizophrenic traits by functionally compensating for KIF3-based CRMP2 transport
日本栄養精神医学研究会 奥平智之
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