血液検査をしないと見逃される亜鉛欠乏(低亜鉛血症)。亜鉛欠乏で、下記のような症状がみられる可能性があります。
亜鉛は、人間の体に存在する約3000種類以上の酵素のうち、300種類以上もの酵素を構成する成分となっています。 亜鉛が不足するということは、身体が活動するための機能低下につながるため、さまざまな欠乏症が発生します。 代表的な10の症状を説明いたします。 ①味覚障害 人間は舌にある味蕾(みらい)と呼ばれる器官で味覚を感知します。
味蕾は細胞分裂が盛んな部位なので、亜鉛酵素が豊富に分布しています。
亜鉛が不足すると、味蕾の特徴的な形態が失われ、感覚細胞としての機能が損なわれます。 亜鉛は唾液腺にあるガストリンの構成にも関与していて、それが味覚受容器に生理的な役割を果たしているとされています。
味覚細胞の入れ替わりは早く、亜鉛不足に敏感と言えます。
また、薬物による味覚障害も亜鉛不足が原因のひとつと考えられます。
抗てんかん薬など、多くのクスリが、亜鉛の吸収を妨げる可能性があります(キレート作用)。
胃酸の分泌を抑える制酸剤も亜鉛の吸収を低下させます。
高齢者でいろいろクスリを飲んでいる方は、クスリもチェックをしておいた方がよいでしょう。 ②皮膚症状 コラーゲンの合成や架橋には亜鉛が必要なため、不足すると皮膚が乾燥してきます。 ③脱毛 髪は毎日伸びています。
亜鉛不足による細胞分裂の低下は、髪が作られなくなるだけでなく脱毛の原因になります。 ④性機能低下 精子や卵子などの生殖細胞は細胞分裂が活発な細胞のひとつです。
亜鉛が不足することで細胞分裂が十分に行われず、性機能の低下が発生する可能性があります。
精液や前立腺には亜鉛がたくさん含まれていて、精子形成やテストステロン合成には亜鉛が必要です。
精子の運動や活発化にも亜鉛が関与しています。
男性の性腺発育には亜鉛は特に大切です。男性不妊の一因となります。 ⑤性成熟の遅れ 亜鉛は性ホルモンの分泌にも関わります。
亜鉛が不足することで性ホルモンの分泌が少なくなり、性成熟が遅れる可能性があります。
亜鉛は黄体形成ホルモン(LH)や卵胞刺激ホルモン(FSH)の作用を高めます。
妊娠の維持にも亜鉛が必要です。 また、成長ホルモン(GH)や甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌にも亜鉛が関与しています。 ⑥貧血 血液も血液細胞と言う細胞です。
そのため亜鉛が不足すると細胞分裂が満足に行われず、貧血を起こす可能性があります《亜鉛欠乏性貧血》。
亜鉛は赤血球中の炭酸脱水素酵素の活性中心となって二酸化炭素の運搬に関わっています。
また、造血因子のひとつであるソマトメジンCは亜鉛タンパクです。
そのため、赤血球の産生、機能維持、安定化に亜鉛は欠かせません。 ⑦精神神経症状 亜鉛不足は、無欲化、記憶障害、情緒不安定、行動異常、振戦などの原因になることがあります。
亜鉛は海馬に多く含まれています。
アルツハイマー病の血漿中および脳内の量の亜鉛の低値が報告されています。
脳内の亜鉛の濃度の低下は、ニューロンの減少を示唆している可能性があります。
また、グルタミン酸やドーパミンなどの神経伝達物質の放出や取り込みを間接的に調節しています。 ⑧免疫力の低下 亜鉛は免疫細胞が活性化するための情報伝達物質として活躍します。
亜鉛が不足することで免疫細胞に外敵の存在が伝わらず、免疫力が低下します。 ⑨耳鳴り、聴力低下 亜鉛が不足すると、内耳器官のひとつである蝸牛(かぎゅう:耳の奥にあるカタツムリのような形状の組織)の機能が低下して耳鳴りのリスクが高まるという報告があります。
蝸牛は体内でも亜鉛の蓄積量が多い器官であるため、亜鉛が聴覚に及ぼす影響は大きいと考えられています。
亜鉛不足に由来する耳鳴りは断続的なものではなく持続的なものが多いようです。 ⑩低コレステロール血症 亜鉛はコレステロール代謝にも関与しています。
亜鉛欠乏では、HDLコレステロールの減少による低コレステロール血症がみられます《HDL代謝異常》。
日本栄養精神医学研究会 奥平智之 作成
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