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発達障害が認知症と誤診される??

執筆者の写真: 奥平智之奥平智之

更新日:2020年6月8日




前頭側頭型認知症ってご存じですか? 認知症のタイプの一つです。

特徴は、人格変化+行動障害です。

特に、行動障害が目立つものを


≪行動障害型「前頭側頭型認知症」≫ と言います。


認知症の中で一番、お世話に手ががかかります。


behavioral variant FTD(frontotemporal dementia):以下 bvFTD と略します。



《臨床診断基準》

A. 早期からの脱抑制的行動

① 社会的に不適切な行動

② マナーや礼儀の欠如

③ 衝動的、性急で不注意な行動


B. 早期からの無為・無関心

① 無為

② 無関心


C. 早期からの考えや感情を共有することの難しさ

① 他者の意図や感情に対する反応の減少

② 社会的関心、対人関係、人間的温かみの減少


D. 早期からのこだわり、常同行動、衝動的な行動

① 単純で繰り返す行動

② 複雑または衝動的あるいは儀式的な行動

③ 常同言語


E. 口唇傾向と食行動変化

① 食の嗜好の変化

② 過食、喫煙や飲酒の増加

③ 口唇傾向、異食

Rascovsky, K.,et al. Sensitivity of revised diagnostic criteria for the behavioural variant of frontotemporal dementia. Brain, 2011; 134(9), 2456-2477.

 自閉スペクトラム症(ASD)の大きな特徴は、

①「相互的な社会的コミュニケーションや対人的相互反応の障害」。そして、

②「限定された反復的な行動や興味」です。

典型例では、生後12~24か月に気づかれます。


しかし、ASDの症状は発達とともに変化したり、成長とともに獲得した代償により発達特性が覆い隠されていたり、社会的要求が限界を超えるまでは症状が顕在化しにくかったりするため、思春期や成人に至るまでASDの存在に気づかれないケースがあります。


 認知症との鑑別が必要となる壮年期までそれなりに社会生活が送れていたようなASDの人では、大きな認知機能の低下はみられないことが多いです。


 ASDの①「相互的な社会的コミュニケーションや対人的相互反応の障害」は、

bvFTDの「考えや感情を共有することの難しさ」に。


ASDの②「限定された反復的な行動や興味」は、

bvFTDの「常同行動や食行動変化」に相当し、症状が似ています。

そのために、両者の誤診例も報告されています。

若い頃の生活歴の聴取が重要になってきます。

若いころから、ASD的な傾向がある人については、たとえ新たに行動障害が生じてきていても、基本的にはASDの範疇でとらえ、ASDの症状を顕在化させるような、社会的欲求の増加や環境の変化がなかったか丁寧に聴取することが大切です。

同様に、ADHDも認知症と鑑別が必要なことがあります。

ADHDは「物忘れ」が主訴となるため、病歴をきちんと聴取しないと、アルツハイマー型認知症と誤診される可能性があります。

佐久田静ら.発達障害と認知症を見誤らないために.老年精神医学雑誌.2020;(31)395.60-68


前頭側頭型認知症においても、EPA/DHA、タンパク質やビタミンB群・D、亜鉛など・・、栄養状態を適正化するのは基本です。

日本認知症ネットワーク 奥平智之

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