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  • 執筆者の写真奥平智之

脳内で鉄はどのように存在するか?

更新日:2021年2月12日


脳の中で鉄がうまく使われるにはどうしたら良いのでしょう?


慢性炎症により、脳の細胞から細胞外へ鉄をくみ出せないと、細胞内が酸化ストレスにさらされます。


脳においても、「炎症による鉄の利用障害」は、からだに害をもたらします。鉄欠乏の治療は「炎症との闘い」と言えます。


● 血液中のトランスフェリン鉄はトランスフェリン受容体を介したエンドサイトーシスによって血液脳関門を通って取り込まれ、脳脊髄液の吸収を介して循環系に戻ります。


● 脳の鉄必要量は血液からの供給量よりも多く、脳内で鉄サイクルを形成して再利用していると考えられます。


● 脳における鉄の分布と機能

分布:成人脳の鉄含量は約60mg。

部位別では淡蒼球,赤核,黒質,被殻,など錐体外路系に多い。


細胞レベルでは鉄は オリゴデンドロサイトに多くふくまれ,次いで神経細胞,ミクログリアが続き,アストロサイトには少ない。


一般に加齢にともない,脳の鉄含量は増加します。

(アルツハイマー病やパーキンソン病では神経細胞内に鉄が蓄積します)


機能:鉄はミトコンドリア電子伝達系の主要構成成分である複合体I~IIIの鉄―硫黄中心(iron-sulfurcenter)やシトクロム類にふくまれ,電子伝達 体として働きます。


鉄含有酵素(あるいは補酵素)として, TCA回路の機能維持,髄鞘の形成,核酸の生合成,種々の神 経伝達物質の生合成と代謝,などに関与します。


出典)中枢神経系における鉄代謝  臨床神経学 52巻11号(2012:11)


● セルロプラスミン(Cp)は、血中に分泌される分泌型Cpと細胞膜に結合するGPI (glycosylphosphatidylinositol) 結合型Cpの2種類のアイソフォーム蛋白質が存在します。

GPI結合型Cpは各組織の細胞内から細胞外への鉄の動員を鉄トランスポーター蛋白質のフェロポルチンと共同して行っています。

分泌型Cpは血液脳関門を通過できないため、脳内のCpではアストロサイトや神経細胞で発現するGPI結合型Cpが働いており、鉄代謝の中心的役割を担っています(図参照)。


● 脳内の鉄サイクル:血中から血管上皮のフェロポルチン(Fp)を介して細胞間隙に輸送された2価鉄、あるいはアストロサイトへ取り込まれた後に細胞表面のFpを介して細胞外へ輸送された2価鉄は、GPI結合型セルロプラスミン(GPI-Cp)により酸化され3価鉄になりトランスフェリンに結合します。

これが神経細胞のトランスフェリン受容体(Tf-R)に結合する主要経路と、クエン酸・アスコルビン酸を介した副経路により鉄が神経細胞に供給されます。

神経細胞にはFpと共役して鉄を細胞外に動員するCpと同様の役割を果たすタンパク質としてアミロイド前駆体蛋白質(APP)が同定されました。

神経細胞にはCpのホモログ蛋白質であるヘフェスチン(Hp)も存在します。


DMT1:鉄トランスポーター(図参照)


出典)研究活動:神経変性症における脳内の鉄代謝(浜松医科大学 第一内科)


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