ビタミンD欠乏は、血清25ヒドロキシビタミンDが20ng/ml未満と定義されています。その半分の10ng/ml未満は、重度ビタミンD欠乏と言えます。
50歳以上の日本人女性の半数は20ng/ml未満と言われています。室内にいることが多い人の多くは、ビタミンD欠乏でしょう。
こちらの研究は、ビタミンD濃度が低いことが、様々な認知症およびアルツハイマー病のリスクの増加に関連しているかどうかを調べたものです。
認知症・心血管疾患・脳卒中ながい158名の高齢の外来に歩行できている人を対象にしました。
5.6年間の平均追跡期間中に、参加者171人がアルツハイマー病の102例を含む認知症を発症しました。
ビタミンD欠乏症が認知症とアルツハイマー病の発症リスクの大幅な増加に関連していることが示唆されました。
Littlejohns, T. J., et al. Vitamin D and the risk of dementia and Alzheimer disease. Neurology, 2014; 83(10): 920-928.
高齢者ではビタミンD欠乏症が高率であることを考えると、これは気をつけなければいけない問題です。
in vitroで、ビタミンDはマクロファージを刺激することによりアミロイド斑の食作用クリアランスを増加させます。
Masoumi A, et al. 1alpha,25-dihydroxyvitamin D3 interacts with curcuminoids to stimulate amyloid-beta clearance by macrophages of Alzheimer's disease patients. J Alzheimers Dis 2009;17:703–717.
Mizwicki, M. T., et al. Genomic and nongenomic signaling induced by 1α, 25 (OH) 2-vitamin D 3 promotes the recovery of amyloid-β phagocytosis by Alzheimer's disease macrophages. Journal of Alzheimer's Disease, 2012;29(1), 51-62.
そして、ビタミンDは皮質ニューロンのアミロイド誘発性細胞毒性とアポトーシス(細胞死)を減らします。
Dursun E, et al. A novel perspective for Alzheimer's disease: vitamin D receptor suppression by amyloid-β and preventing the amyloid-β induced alterations by vitamin D in cortical neurons. J Alzheimers Dis 2011;23:207–219.
ビタミンD受容体は、海馬や歯状回などの記憶に関与する領域を含む、脳全体に発現しています。
Eyles, D. W., et al. Distribution of the vitamin D receptor and 1α-hydroxylase in human brain. Journal of chemical neuroanatomy, 2005;29(1): 21-30.
ビタミンDの活性型を合成する酵素である1α-ヒドロキシラーゼは、いくつかの大脳領域で産生されます。
ビタミンDの活性型である1,25dihydroxy-vitamin D3(1,25-D3)は、神経成長因子、ニューロトロフィン3、グリア由来の神経栄養因子などのニューロトロフィンの発現を調節します。
Annweiler, C., et al. Vitamin D concentration and lateral cerebral ventricle volume in older adults. Molecular nutrition & food research, 2013; 57(2): 267-276.
ビタミンDの補給は、加齢に伴うラットの学習と記憶の加齢に伴う低下を改善します。
Briones, T. L., & Darwish, H. Vitamin D mitigates age-related cognitive decline through the modulation of pro-inflammatory state and decrease in amyloid burden. Journal of neuroinflammation, 2012;9(1): 244.
また、高齢者318人を対象とした横断研究では、25(OH)D欠乏が白質高信号量の増加と大血管梗塞の数の増加に関連していることがわかりました。
Buell, J. S., et al. 25-Hydroxyvitamin D, dementia, and cerebrovascular pathology in elders receiving home services. Neurology, 2010;74(1): 18-26.
つまり、ビタミンD欠乏は、脳血管性とアルツハイマー型、両方の認知症のリスク因子と言えます。
認知症予防において、日光を浴びることは大切です。ビタミンDは、食べ物では鮭(サケ)ですね。
日本栄養精神医学研究会 資料 奥平智之
参考 「血液栄養解析を活用!うつぬけ食事術」
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