食と心「栄養精神医学」の新たな扉 ― 日本栄養精神医学会 認定医・指導医・認定施設教育責任者の使命
- 奥平智之

- 10月2日
- 読了時間: 4分
「メンタルヘルスは食事から」この言葉に、私たち日本栄養精神医学会は、医療の未来を託しています。
食事はただの栄養補給ではありません。人の心と体を養い、人生の力を支える根源です。しかし現代社会において、その当たり前の真実は見過ごされ、多くの患者が栄養の欠乏や偏りのために心を病み、苦しみ、時に命を絶っています。
精神医学に栄養医学を統合することは、私たちが人間の尊厳を守るために果たすべき責務です。その使命を確固たる形にするために、本学会は「栄養精神医学認定医(日本栄養精神医学会認定医)」「指導医」、そして「認定施設教育責任者」という制度を立ち上げました。
認定医 ― 新しい治療軸を担う医師
鉄欠乏、不飽和脂肪酸の不足、ビタミンやミネラルの欠如。これらがうつ、不安、不眠、発達障害の背景に潜んでいることは、もはや一部の研究にとどまる話ではありません。実臨床で確かに存在し、改善可能な病態です。
認定医は、その事実を科学的に理解し、臨床で患者に還元できる力を持つ医師です。「食と心」を結びつけ、患者の未来を変える存在。それは、従来の枠を超えた新しい精神科医療の担い手であり、社会が待ち望む専門家の姿です。
指導医 ― 知を継承し、灯を広げる医師
しかし、この道は一人の努力では広がりません。後進を導き、臨床現場に浸透させ、学術として体系化する力が必要です。それを担うのが「指導医」です。
指導医は、自らの臨床知を体系化し、若い医師や医療スタッフに伝えます。そして学会を通じて成果を発信し、国内外の潮流に影響を与えます。患者を救う力を「自分一人の手技」に留めず、未来を担う仲間へと継承する。その姿勢こそが、真のリーダーとしての証明です。
日本栄養精神医学会の研修施設の教育責任者には、指導医が必須です。また、一部の日本栄養精神医学会の医療機関型やカウンセリング型の認定施設の「顧問医」として依頼されることも多くなると思います。
認定施設教育責任者 ― 拠点を築く旗手
さらに重要なのは「施設」という単位です。個人の力に依存するのではなく、チームとして栄養精神医学を実践し、教育の拠点とする。その要を担うのが「認定施設教育責任者」です。
施設の責任者は、診療の質を担保し、研修の場を提供し、地域に学びの光を広げる旗手です。全国に点在する認定施設がつながり合い、医療資源のネットワークを築くことで、患者にとって「どこへ行っても食と心を大切にする医療が受けられる」社会を実現できます。
認定制度が拓く未来
この三つの制度は、単なる肩書きや資格にとどまりません。
それは、学会としての意思表明です。「日本において栄養精神医学を確立する」という歴史的使命を果たすための、旗印であり、礎です。
学術的には、認定医が積み上げる症例と研究が、日本から世界へ新しいエビデンスを発信していきます。社会的には、認定施設が全国に広がり、患者や家族に「信頼の拠点」が提供されます。そして教育的には、指導医が次代を担う人材を育成し、持続可能な医療基盤を築きます。
「食と心」の栄養精神医学認定医・指導医が世界を変える
先生方。精神医学は幾度となく進化の波を乗り越えてきました。精神分析、薬物療法、認知行動療法、脳科学…。そして今、私たちの前に広がる次なる地平は「栄養精神医学」です。
この流れに立ち向かうのではなく、先頭に立ち、社会を導くのが私たち医師の使命です。認定医として新しい治療軸を担い、指導医として未来を拓き、教育責任者として拠点を築く。その一歩一歩が、日本の精神科医療を刷新し、苦しむ人々に希望の光をもたらします。
結び
「メンタルヘルスは食事から」この理念のもと、「食と心をつなく医療」を広めるために、日本栄養精神医学会は歩みを進めています。
崇高な使命を担うこの認定制度に、どうか先生方の力を重ねてください。ともに、日本の医療を変え、世界へ新たな価値を示す歴史の一歩を刻んでまいりましょう。

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