さまざまな理由で、摂食障害の患者は亜鉛欠乏を発症する可能性があります。
亜鉛欠乏は、食欲低下、胃腸虚弱、体重減少の一因になります。
亜鉛の摂取不足もしくは、視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)を介した強いストレスにより血清亜鉛は低下します。
炎症によっても低下しますが、CRPの上昇があったものは本試験からは除かれています。
亜鉛を含む食材を摂取しても、自己誘発性嘔吐・下剤乱用・腸内環境悪化などによって
腸からの亜鉛の吸収が低下することがあります。
この研究では、亜鉛の状態を過食症の62人の患者と神経性食欲不振症の24人の患者で評価しました。
図の血清とは別に、尿中の亜鉛の排泄の減少も指標としました。
24人の拒食症のうち9人が200 μg /24時間未満の亜鉛の尿中排泄。
62人中14人が24時間尿亜鉛排泄量が減少しました。
以上から
24人の拒食症患者の計13人(54%)のと62人の過食症患者の計25人(40%)が亜鉛欠乏症の生化学的基準を満たしていました。
著者らは、長期的な亜鉛欠乏は、これらの患者の摂食行動の変化の慢性化につながる可能性。
細胞膜の流動性に影響を与えるなど、神経伝達物質の受容体機能に影響を与える可能性を伝えています。
●まとめ
・①摂取不足②強いストレス③炎症は低亜鉛血症の原因
・摂食障害においては、自己誘発性嘔吐・下剤乱用・腸内環境悪化などによって腸からの亜鉛の吸収が低下する可能性
【参考】
血清亜鉛値の基準:
80〜130µg/dL:正常
60〜80µg/dL未満:潜在性亜鉛欠乏
60µg/dL未満:亜鉛欠乏症
(日本臨床栄養学会編:亜鉛欠乏症の診療指針2018より)
日本栄養精神医学研究会 奥平智之 資料
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