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執筆者の写真奥平智之

アミロイドβ(Aβ)とは?:アデュカヌマブ:アミロイドβオリゴマー:認知症対策は食事から:日本認知症ネットワーク

更新日:2021年8月27日


アミロイドβ(Aβ)というタンパク質が集まると、老人斑や脳血管アミロイドになります。

そして、アミロイドβの前駆タンパク質をAPP(amyloid-beta precursor protein)は呼ばれています。

APPの多くは、αセクレターゼとγセクレターゼで分解されて、「p3」という脳に沈着しないタンパク質になります【非アミロイド産生経路】。

しかし、βセクレターゼとγセクレターゼで分解されると、アミロイドβができてしまいます【アミロイド産生経路】。


アミロイドβのうち、9割はAβ40ですが、脳に最初に沈着して老人斑になるのは、残り1割のAβ42です。

脳血管アミロイドで、脳実質の毛細血管に沈着する場合は、Aβ42優位になります。


脳内のアミロイドβは、アミロイドβ分解酵素(=①インスリン分解酵素 ②ネプリライシン)によって分解されます。

さらに、沈着したアミロイドβは、脳の免疫細胞である活性化ミクログリアによって食べられて除去されます。


アミロイドβを作るγセレクターゼの活性中心の「プレセレニン」、及びその基質である「APP」は、アルツハイマー型認知症の主な原因遺伝子であることがわかっています。


神経毒性が高いのは、Aβ が数百個以上凝集してできたAβ繊維(不溶性)ではなく、Aβ が2~30個程度集まったAβオリゴマーです。


アミロイドβだけでなく、タウも認知症進行に大きく関与しています。タウは、神経細胞の軸索における微小管の安定化に欠かせない細胞骨格の一つです。このタウが異常にリン酸化されると、タウは機能を失い、微小管が不安定になり、微小管からタウが解離して、細胞質にタウが増えてしまいます。タウ同士が重合した結果、神経原線維変化がつくられます。


Aβオリゴマーを増やすと、老人斑がないにもかかわらず、リン酸化した「タウ」の蓄積が始まってしまいます。


また、Aβのオリゴマーがインスリン受容体の結合部位に関してインスリンと競合することで脳のグルコース代謝が損なわれ、アルツハイマー病の症状の一部が引き起こされることが報告されています。


今年になって、抗アミロイドβ抗体として一般名「アデュカヌマブ(Aducanumab)」、商品名「アドゥヘルム(ADUHELM)」が米食品医薬品局(FDA)で承認されました。

静脈注射されたアデュカヌマブは、血液脳関門を通過して、脳のアミロイドβオリゴマーの除去を助けます。

アミロイドβオリゴマーは確かにアルツハイマー病を発症の要因の一つとして重要視されていますが、様々な理由から過度な期待はできません。

進行予防の一助になる可能性はありますが、死んだ神経細胞が回復するわけではないので、既存の抗認知症薬と同様に根本的に治るわけではありません。

アミロイドβの溜まり具合を調べるには、おそらく、アミロイドPET検査も必要になるのでしょう。


●まとめ

アミロイドβは、通常は“ゴミ”として、脳の外に排出されます。しかし、加齢や睡眠不足など様々な要因により排出が上手くできなくなると脳内に蓄積してきてしまいます。

アミロイドβはアルツハイマー病発症の10~15年も前から脳内に蓄積し始めます。

50歳代から加齢に伴い増えていきます。

アミロイドβ自体が問題というより、Aβ が2~30個程度集まったAβオリゴマーの神経毒性が問題視されています。


早期からの日々の食事・睡眠・運動といった基本的な認知症予防が基本です。

血液脳関門からアミロイドβを除去する速度は、睡眠中に大きく増加します。

糖質過多に伴うインスリン過多は、インスリン分解酵素(=アミロイドβの分解酵素)の無駄遣いになってしまうので、糖質の摂りすぎはいけません。

食事栄養を中心とした生活における抗炎症・抗酸化アプローチは大切です。

例えば、ビタミンD。

ビタミンDはマクロファージを刺激することによりアミロイド斑の食作用クリアランス(お掃除)を増加させます。

そして、ビタミンDはアミロイド誘発性細胞毒性とアポトーシス(細胞死)を減らします。


「認知症対策は食事から」





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「メンタルヘルスは食事から」 日本栄養精神医学研究会 奥平智之 作成

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