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鉄欠乏とATP低下が、マグネシウムの働きに影響を及ぼす可能性

「鉄欠乏がマグネシウムの働きを妨げる」という視点、ご存じでしたか?


これは、まだ医学界では広く知られているわけではありませんが、臨床現場でとても大切なヒントになる可能性があります。


鉄は、ミトコンドリアの電子伝達系(特に複合体I~III)やクエン酸回路の酵素(例:アコニターゼ)に欠かせない補因子です。そのため、鉄が不足すると、ミトコンドリアでのATP産生効率が低下しやすくなります。


ここで注目すべきなのが、「Mg-ATP」という形で存在するマグネシウムの働きです。体内のマグネシウムは、多くがATPと結合して存在し、代謝酵素、ATPase、キナーゼ類など、さまざまな生命活動を支える酵素の働きを支えています。


つまり、ATPが足りなくなると、Mg-ATPの形成も低下し、マグネシウムがうまく機能できない「機能的マグネシウム不足(functional Mg deficiency)」の状態になる可能性があるのです。


この状態では、血清マグネシウム値は正常でも、以下のような症状が見られることがあります


疲れやすさ

こむら返り(筋けいれん)

不安・焦燥感



実際に、にがりなどマグネシウムを補ってもあまり効果が出ない場合、フェリチンが低いなどの鉄欠乏が隠れていることも経験されます。


このように、「鉄−ATP−マグネシウム機能」のつながりを意識することで、不安障害や月経関連気分変調、慢性疲労症候群などの背景にある見落とされがちな要因に気づけるかもしれません。


マグネシウムだけを補ってもうまくいかないケースでは、鉄欠乏やATP産生低下の存在を考える

この視点を持つことで、日々の診療に新たな突破口が見えるかもしれません。


【参考文献】

1. Bussière FI, et al. Magnesium and the iron deficiency anemia. Magnes Res. 2004;17(1):39-46.

2. Nielsen FH. Magnesium deficiency and increased inflammation: current perspectives. J Inflamm Res. 2018;11:25–34.

3. Abbaspour N, et al. Review on iron and its importance for human health. J Res Med Sci. 2014;19(2):164–174.

4. de Baaij JHF, et al. Magnesium in Man: Implications for Health and Disease. Physiol Rev. 2015;95(1):1–46.

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毎月の企画の詳細は、奥平智之ホームページ 、日本栄養精神医学研究会ホームページのスケジュールをご覧ください

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© 2019 by Dr. Tomoyuki Okudaira

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