エネルギー摂取量の制限による寿命延長の中心的な役割を果たすのは、NAD+を基質とするサーチュイン(sirtuin)です。
サーチュイン(長寿遺伝子)は、NAD+依存的にヒストンや転写因子・転写共役因子および各種の酵素を脱アセチル化して、遺伝子発現をコントロールしています。
サーチュインは老化やさまざまな病の予防に大切。
加齢や肥満、慢性炎症にともなって骨格筋や肝臓、脂肪組織など多くの組織で、加齢に伴うNMN生成能力の低下によりNAD+濃度、サーチュイン活性が低下してしまいます。
逆に、細胞内NAD濃度を高く維持することができれば、寿命延長が期待できます。
NADの濃度低下は、ミトコンドリア機能低下につながります。
◎注意すべきことは、細胞内のNAD濃度は一定に保たれるように制御されているので、ナイアシンやトリプトファンをたくさんとっても、細胞内のNAD濃度の上昇は期待できません!
これはニコチンアミドからニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)を経てNAD+を合成するサルベージ経路(再合成する経路)があります。
ニコチンアミドをNMNに変換する律速酵素ニコチンアミドホスホリボシル基転移酵素(Nampt 、つまりNAD合成系酵素 )は、NAD濃度によってネガティブフィードバックを受けるためです。
つまり、増やそうとしても、ブレーキがかかってしまう仕組みになっています。
◎このNamptの制御を受けずにNAD+合成に利用される化合物としてNMNとニコチンアミドリボシド(NR)があります。
いずれも細胞に素早く取り込まれ、細胞に取り込まれたニコチンアミドリボシド(NR)はNMNに変換されます。
NMNはNamptの作用を受けずにNAD合成に利用されるため、NMNの摂取によって、細胞内のNAD+濃度が上昇します。
◎NMNで糖尿病モデル動物の肥満抑制、インスリン抵抗性の改善が示されています。さらに、動物モデルでアルツハイマー病における認知機能や記憶の改善も報告されています。
以上のことから、NMNの摂取が、寿命延長、病気の予防と改善に期待されています。
Namptは、運動やファスティングによっても増えることがわかっていますので、これらも細胞内のNAD濃度上昇に寄与します。
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奥平 智之
日本栄養精神医学研究会 会長
医療法人 山口病院 副院長
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