そのイライラ、パニック、不眠 ― 「銅/亜鉛比」が関係しているかもしれません
- 奥平智之
- 5月11日
- 読了時間: 4分
「なんだか情緒が不安定で…」
「寝つきが悪く、些細なことで怒りっぽくなる」
それ、心の問題だけではなく、“ミネラルのアンバランス”が背景にある可能性をご存知ですか?
栄養精神医学の視点では、銅/亜鉛比(Cu/Zn比)の上昇が、興奮性神経の過活動と深く関わっていると考えられています。
■ 銅と亜鉛は、神経伝達の“アクセルとブレーキ”
- 銅(Cu)は、ドーパミンをノルアドレナリンに変換する酵素「ドーパミンβ-ヒドロキシラーゼ」の補因子。
銅が多すぎると、ノルアドレナリン過剰 → 交感神経の過興奮状態に傾きやすくなります。
- 亜鉛(Zn)は、抑制系の神経伝達物質であるGABAの働きをサポートし、NMDA受容体の過活動を抑制する役割も。
“心のブレーキ”のような働きを持つ亜鉛が不足すれば、神経は暴走状態になります。
このバランスの目安となるのが、血清中の「銅/亜鉛比(Cu/Zn比)」です。
■ Cu/Zn比が1.2以上 ― 興奮性優位のサイン
健康成人では、Cu/Zn比は0.7〜1.0が正常域。
これが1.2を超えてくると、神経伝達のバランスが交感神経優位に傾いていると考えられます。
この状態では以下のような症状が起きやすくなります:
- 不安感・焦燥・パニック発作
- 衝動性・注意集中困難(ADHD傾向)
- 易怒性・感情不安定
- 入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒
これは単なる「ストレス体質」ではなく、神経化学的な異常の表れなのです。
■ Cu/Zn比と精神疾患の関係 ― 複数の研究報告より
- ADHD:血清銅が高く亜鉛が低い児に多く見られ、Cu/Zn比の上昇と衝動性の関連が報告されています(Arnold et al., 2005)。
- 不安障害・パニック障害:ノルアドレナリンやグルタミン酸系の過活動を誘発しやすく、特にGABA活性低下との併存で感情の暴発が起きやすくなります。
- うつ病:亜鉛不足はBDNF(脳由来神経栄養因子)の低下やHPA軸の過活性と関連。銅過剰によりモノアミン代謝が乱れ、抗うつ薬の効果が乏しい例もあります。
■ Cu/Zn比が乱れる原因は?
1. 慢性炎症やストレス:炎症マーカーとして働くセルロプラスミンが増えると、銅も上昇。
2. 亜鉛摂取不足:糖質中心の食生活、鉄剤・カルシウムとの競合で吸収低下。
3. エストロゲン製剤(ピル・更年期ホルモン):銅の体内貯留を促進します。
■ では、どうすればよいか?
【まずは検査を】
- 血清銅:正常値 70〜140 μg/dL
- 血清亜鉛:正常値 70〜120 μg/dL
- Cu/Zn比:1.2を超える場合は要注意
【改善のための実践】
1. 食事改善:牡蠣、レバー、卵、ナッツなどの亜鉛を意識的に摂取
2. サプリメント:Zn単独またはZn+ビタミンCを医師の指導下で
3. 銅の環境評価:銅製の鍋、銅含有のサプリや化粧品の見直し
4. 婦人科薬使用歴の確認:ホルモン治療中の女性は銅蓄積に注意
■ 栄養精神医学からのメッセージ
Cu/Zn比は、心のアクセルとブレーキの比率を映し出す、生化学的マーカーです。
「どうしても感情をコントロールできない」「心がいつも落ち着かない」
それは、あなたの意志の弱さではありません。体内ミネラルのバランスの問題かもしれません。
そしてこのミネラルバランスは、再調整が可能です。
食事、生活、そして科学的に裏付けられた栄養補給。
メンタルの改善は、「血液の中」から始められるのです。
ご自身や患者さんのCu/Zn比、気になりませんか?
まずは専門の医療機関で血液検査をすることから、あなたのメンタルの“今”を見直してみましょう。

#栄養精神医学 #銅亜鉛比 #神経伝達物質 #不安障害 #ADHD #微量ミネラル #ノルアドレナリン #GABA #ドーパミン #フェリチン #奥平智之 #メンタル #日本栄養精神医学研究会 #メンタルヘルスは食事から #イライラ #興奮 #うつ #不眠
2025
5/22【子どものストレス発見法と対処法】栄養と漢方WEB講座
7/10【望診】栄養と漢方WEB(小江戸)見てわかる!
6/15 田植えの会 (どなたでも)埼玉県
10/12【祭】メンタルヘルスは食事から(日本栄養精神医学医学研究会2025年総会)
💫毎月の各種イベントは、奥平智之ホームページ のスケジュールもしくは、日本栄養精神医学研究会のホームページ のスケジュールからお申し込みください。
💫奥平智之ホームページ に登録されている方は、不定期ですが新しいスライドを受け取ることができます。未開封が続いた方は登録が削除されているので、お手数ですが新しいメールで再登録をお願いします。
Comments